更新日:2025年11月1日|この記事はF1技術解説シリーズの一部です。
F1マシンの速さを決める最大の要素、それは「フロアの空力」。
2022年以降、F1では“グラウンドエフェクトカー”が復活し、フロア設計が勝敗を左右するほど重要になっています。
この記事では、F1のフロア空力の仕組み・原理・進化を初心者にもわかりやすく解説します。
🏁 フロアがF1マシンに与える空力的役割
フロア(Floor)とは、F1マシンの底面に位置するパーツで、外からは見えにくい部分です。
しかし実際にはダウンフォースの約60%以上を生み出す「見えない翼」と言われています。
上部のウイングが空気を押し下げるのに対し、フロアは空気を吸い込むように働き、低圧領域を作り出して車体を地面に吸いつけます。

▲ F1マシンのフロア構造と空気の流れ(ベンチュリトンネル)
ダウンフォースとは何か?
ダウンフォースとは、空気の力でマシンを地面に押し付ける力のこと。
この力が強いほど、タイヤのグリップが増し、コーナーを高速で曲がれます。
ただし、同時に空気抵抗(ドラッグ)も増えるため、バランスが重要です。
ウイングとフロアの違い
ウイングは上から空気を押し下げる「外的」な力、フロアは下から吸い付ける「内的」な力。
この2つのバランスによって、F1マシンの安定性と速さが決まります。
💨 グラウンドエフェクトの仕組みと原理
ベンチュリ効果による吸引力
フロアの下に設けられたトンネル構造(ベンチュリトンネル)を通る空気は、断面積が狭くなるほど流速が上がり圧力が下がります。
これにより地面との間に低圧領域が生まれ、マシンを地面に吸い寄せます。
ベルヌーイの法則の応用
高速で流れる空気の圧力が低下するという「ベルヌーイの法則」。
これをF1マシンのフロア設計に応用し、ウイングよりも効率的にダウンフォースを生み出しています。

▲ ベンチュリ効果により車体下で発生する吸引力のイメージ
⚙️ 2022年以降のF1フロアレギュレーション
2022年のF1レギュレーション改定で、フロアを主体とした空力構造が再導入されました。
これにより「車体下での気流制御」がダウンフォースの中心となり、グラウンドエフェクト時代が本格的に復活しました。
ポーポシング問題の発生と対策
強力な吸引力の副作用として生じたのが「ポーポシング(上下バウンド)」現象です。
車体が地面に吸いつきすぎて跳ねることで、ドライバーのコントロールが難しくなりました。
2023年からはフロア高さの最低値が見直され、安定性が向上しています。
🔧 現代F1チームのフロア開発と秘密
レッドブルが速い理由
2022〜2024年にかけて圧倒的な速さを見せたレッドブルRB18〜RB20。
その秘密は「段差構造を活かしたフロアの気流制御」にありました。
他チームよりも渦の流れを精密にコントロールし、車体下の圧力分布を安定化させています。
フロア構造と素材の最前線
F1のフロアはカーボンファイバー+ハニカム構造で軽くて強い。
底面にはチタンプレートが埋め込まれ、火花を散らしながら路面を擦ることで安全に摩耗をコントロールします。

▲ カーボンとチタンを組み合わせたフロア素材(火花の正体)
🚀 将来のF1でフロアはどう進化する?
2026年以降の新レギュレーションでは、燃費効率や環境性能の向上がテーマとなります。
それでもフロア構造は存続予定で、将来的には「アクティブフロア」や「可変気流制御」など、電子的に空気を操る技術の導入が期待されています。
📘 まとめ|F1空力の鍵は“見えないフロア”
- F1マシンの空力の約6割はフロアが担っている。
- 2022年以降のグラウンドエフェクト復活で重要性が再上昇。
- レッドブルなど上位チームは床下気流制御が圧倒的。
- 今後はAIやアクティブ空力による進化も期待。
F1の速さを決めるのは見えない床下。
「空力の勝敗は、地面との数センチで決まる」――それが現代F1の真実です。


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