F1チームに所属する「リザーブドライバー」の役割を解説。シーズン中の具体的な仕事、シミュレーター活動、他カテゴリ参戦の可否まで、知られざる実情に迫ります。
はじめに
F1観戦をしていると「リザーブドライバー」という肩書きを耳にすることがあります。
「ドライバーは20人しかいないのに、リザーブって何をしているの?」
「実際に走らないなら存在意義はあるの?」
「他のレースに出て経験を積んでいいの?」
実はリザーブドライバーは、表舞台には立たないがチームにとって欠かせない存在です。今回はその役割や実態を詳しく解説していきます。
1. リザーブドライバーとは?
1-1. 定義
- 正式レースドライバーの代役要員として契約されるドライバー。
- 通常のF1シーズンで走るのは20人のレギュラードライバーですが、事故や病気などで欠場者が出た場合、代役を務めるのがリザーブドライバーです。
1-2. 呼称の違い
- リザーブドライバー(Reserve Driver):実戦代役を前提とした契約。
- テストドライバー(Test Driver):シーズン前後の開発テストやシミュレーター作業中心。
- シミュレータードライバー:本拠地のシミュレーターで走行を担当し、週末のセットアップに貢献。
👉 近年は役割が重なり、**「リザーブ兼テスト」**として複数業務を担うことが一般的です。
2. リザーブドライバーの主な仕事
2-1. 代役として走る準備
- 最も重要な役割は「レギュラーに万一の事態があった場合、即座に代わりに走れるよう備えること」。
- 実際に過去には、体調不良や新型コロナ感染で欠場となったドライバーの代役を務めた例が多数あります。
例:
- 2020年:ルイス・ハミルトン欠場 → ジョージ・ラッセルがメルセデスで代役。
- 2022年:セバスチャン・ベッテル欠場 → ニコ・ヒュルケンベルグがアストンマーティンで代役。
2-2. シミュレーター作業
- 現代F1では実走テストが厳しく制限されているため、シミュレーターが事実上の開発現場。
- 金曜日のフリー走行後、本拠地で徹夜で走行データを入力し、土曜日のセットアップに反映する。
- 特に若手リザーブは「チームの裏方エース」として重要視されています。
2-3. マーケティング・広報活動
- チームのスポンサーイベントに参加し、メディア対応やプロモーション走行を担当。
- 「走る機会が少ない=露出が減る」分、こうしたイベントでファンや企業に存在感を示すのも役目。
2-4. 若手育成プログラムとの連携
- レッドブル、フェラーリ、メルセデスなどのトップチームでは、育成ドライバーをリザーブに据えてF1環境に慣れさせるケースが多い。
- 実際の走行経験よりも「F1チームの一員としての学習」が目的。
3. リザーブドライバーは実際に走るのか?
3-1. レース週末での走行
- FIAの規定により、各チームはシーズン中に若手ドライバーを最低2回、フリー走行1回目(FP1)に起用する義務があります。
- 多くの場合、この枠をリザーブドライバーが担当。
- 本戦スタートの経験を積む貴重なチャンスとなります。
3-2. 実戦代役の現実
- 実際にレースで代役を務めるケースは稀。
- しかし一度チャンスを得れば、キャリアの転機になることも。
- 例:2020年ラッセルがメルセデスで代役 → 翌年正式ドライバーに抜擢。
4. 他カテゴリで走れるの?
4-1. 基本的にOK
リザーブ契約は「F1週末に待機する義務」があるだけで、他のレースシリーズへの参戦は基本的に可能です。
4-2. 主な参戦先
- F2/F3:若手リザーブが経験を積む定番。
- フォーミュラE:シーズンカレンダーが異なるため、兼任例が多い。
- WEC(世界耐久選手権):ル・マン24時間を含む耐久レースで走るケースも増加。
4-3. 注意点
- スケジュールが重なるとF1優先。リザーブとして呼ばれた場合、他カテゴリのレースを欠場しなければならない。
- 契約内容によっては「競合メーカーが関与するカテゴリー」への参戦が制限される場合もある。
例:
- ニコ・ヒュルケンベルグ:F1リザーブを務めながらWEC参戦 → ル・マン優勝。
- ストフェル・バンドーン:F1リザーブとフォーミュラEチャンピオンを両立。
5. リザーブドライバーのキャリアパス
5-1. レギュラードライバーへの昇格
- 最も理想的なルート。
- ただし近年はシートが限られ、数年間リザーブを務めてもチャンスが回ってこない例も多い。
5-2. 他シリーズでの活躍
- WECやフォーミュラEでトップキャリアを築くドライバーも多数。
- 「F1を逃しても世界的トップドライバーとして成功できる」ケースは少なくない。
5-3. テスト/シミュレーション専門へ
- 実戦機会はなくても、シミュレーション能力を買われて長期契約する例もある。
- 開発の裏方としてチームに不可欠な存在になることも。
6. 実際のリザーブドライバー例
- ニコ・ヒュルケンベルグ:「スーパーサブ」と呼ばれ、度々代役を務めF1復帰。
- オスカー・ピアストリ:アルピーヌのリザーブを経て、2023年マクラーレンでデビュー。
- リアム・ローソン:2023年日本GPで角田の代役を務め、鮮烈な印象を残した。
これらの例から分かるように、リザーブは「チャンス待ち」ではあるものの、一度その瞬間を掴めば未来が大きく開けるポジションです。
7. まとめ
リザーブドライバーとは、**F1チームの“影の支柱”**です。
- 代役の準備、シミュレーター、広報活動と多岐にわたる。
- 実際に走る機会は限られるが、その一度が人生を変える。
- 別カテゴリ参戦は基本的に可能で、むしろキャリア維持のために重要。
「レースに出ないのに意味があるの?」と思われがちですが、F1という巨大なシステムを支える存在として、リザーブドライバーの存在価値は計り知れません。
日本人でもRBのリザーブドライバーの岩佐選手がSF(スパーフォーミュラー)に参加しいますよね!
来年度はシートを獲得できるでしょうか!楽しみです!
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